2012年11月13日火曜日

恵文社一乗寺店で感じた、質感

   空気の質感を味わう場所がある。お店で言えばカフェであったり美容室、個人住宅であれば和室であろうか。日本人が感じる空気の質感とはハレの場所という意味であると思う。ハレの場所とは他人と格好をつけて向き合う場所とでも言えるだろうか。なのでそんなお店で頼むコーヒーは高くつくが、それも良しとする。また、おしゃれな空間の美容室などは行っていて気持ちが良く感じるのはその空気の質感が良いからだと思う。そこのサービスがどうとか味がどうという事もあるだろうが、その空間を楽しみたいから人は集まる。僕は宮崎の片田舎で設計の仕事をしている。高校を出てからアメリカに行き、そして京都に住んでいたので色々な場所を見てきた。残念な事だが都会と違い、田舎でそんな質感を味わうハレの場所を見つけるのは難しい。絶対的な人口も少ないし、都会と違いお金に余裕がある人々も少ないからかも知れない。だが、僕は設計屋さんだ。少しでも多くのハレの建物を作りたいと考えている。 『あえて町を定義するなら、うら若い女性がおしゃれをして出かけたくなる場所』 そんな事を司馬遼太郎が言っていた。そのおしゃれをする場所もなければ、そんなおしゃれも転がってはいないのが田舎の現実だ。しかし、これでは人生面白く無い。僕らのような田舎もんはもうすこし空気の質感を味わうべきだと思う。ウキウキわくわくするべきだと思う。

   一つわかりやすい例を挙げようと思う。僕が京都で極貧設計屋をやっていた頃、道に迷ってたまたま入った本屋のお話だ。本屋さんという物は通常おしゃれな場所ではないし、そんな目的で来る場所ではない。しかし、この本屋さんは違っていた。どうもお店に来ている方々の服装が違うし、女性には妙に品があり、全員べっぴんさんに見える。お店の名前は恵文社一乗寺店。通常本屋の棚の配置は整然と並んでいるのが常だが、このお店の棚は丸いテーブルはあるし、棚の配置も非常に工夫されていた。しかもある本はよく読まれるような本ではなくどちらかと言えばアート専門書のようなものばかり。しかしお客さんの数はとても多い。どこか、ここに来店するのがステータスであり、文化なんだと言われている気がした。そしてこのお店の持っている空気に透明感のような物があり、とても良い。

   ワクワクしながらおしゃれをして行きたくなる店がちょっとずつでも増えたら、田舎でも楽しくなる気がする。あそこの美容室に行くと清々しい気持ちになれる。あそこの喫茶店で本を読むと気持ちが良い。そんな街中を作って行きたい。

   若者が田舎から消えて久しい。多くの人が仕事がないからね~と言うが、それだけなんだろうか。どうも違う気がする。そんな良いお店が出来れば町は発展するし、仕事がなかったら自分らでこさぐ気がする。その町に魅力があれば勝手に仕事ぐらい作るさ。

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