2013年8月23日金曜日

ヨセミテ公園で地獄を見た

   ふとニュースを見ていたら、アメリカのヨセミテ公園が火事になって結構な騒ぎとなっている。なんでも既に217平方キロが焼けたそうで、9棟の建物が消失したようだ。217平方キロという事は50㎞×40㎞以上の土地が焼けているわけで、どえらいことである。火の勢いは衰えておらず、カリフォルニア知事さんが非常事態宣言をだしたようである。9棟の建物しか焼けていないということはキャンプ場だろうか。。

   僕がまだアメリカで語学学校に通っている1996年の秋のこと。黒板に 『ヨセミテ公園旅行参加者募集』 と書いてあった。 『キター !! 』 とは思ったが、なんせ銭がない。。VISAカード送ってくれと母親に頼んだは良いのだが、母親が郵便局のカードを送ってきたため明日の銭もなかったからだ。。う~んでも行きたい。。どうしよう考えた。。僕が出来るのは肉体労働とギターが弾けのみ。。という事で学校の職員室に行って良くして下さるエルビスが大好きな女校長先生に頼み込んだ。 『何でもしますよって。。』 すがる貧乏留学生に校長は、 『働く?』 と言った。するとちょうど産休に入った人がいて、スタッフが足りてないようであった。ということで、スタッフとヨセミテに向かった。

   ヨセミテ公園とはカリフォルニア中部にある国立公園で、ユネスコの世界遺産にも登録されているすてきな自然公園である。ヨセミテ・フォール (滝のこと) はとても有名で、年間なんと360万人も訪れる素敵な場所だ。大抵のアメリカの自然公園はそうなのだが、このヨセミテ公園も昔は原住民であるインディアンが住んでいた土地である。調べてみたら、やっぱり殺しまくって追い出したようだ。。

   スタッフとして行った僕は、とりあえず何するの?と他のスタッフに聞いたら、夕食後にギターでも弾いてくれ。。あと適当に写真でも撮ってくれと言われた。その他のスタッフもほとんどやること自体がないらしい。なんて適当なんだよアメリカンとは思ったが、しょうがなく他のスタッフと一緒に初日は山登りが始まった。

   国柄が違うのか、日本と違い向こうの山には手摺りなどはない。標高1,000メートルほどの山。。というか岩。。にも登ったが、まったく手摺りなどはなく、その崖っぷちを渡り歩く。 『死ぬ人いないの?』 と地元のバイトの姉さんに聞いたら 『毎年4・5人は落ちるかな』 と軽く言っていた。まあそうだろう。自己責任の国である。グランドキャニオンに手摺りを付けていないお国柄である。 『何で付けないん?』 と聞くと 『だってブサイクじゃん !! 』と即答された。まあ、この国では落ちるヤツが悪い。

   キャンプ地からは2時間ぐらい山を登っただろうか。有名なヨセミテ・フォールは全く水が流れていない。というのも秋である。ヨセミテ・フォールは雪解け水が流れてこそ滝となるわけで、全くの崖であった。。学生一同、何のために来たんだという空気が流れる。。だがアメリカ人はああそうなんだ~という程度で何とも思っていない様子だった。これが日本だったら苦情が出るだろう。。銭返せになるだろう。。

   夕暮れ時、しっかり僕とスタッフのデナーショーも終わり就寝となる。だが困った事に妙に寒い。というか秋だというのにビビるくらい寒い。。昼は心地よかったが、夜はマイナス10℃になっていた。一応バンガローはある。そして寝袋も渡された。だが気温がここまで下がるという説明は一切受けていないので皆それほど着込んでいない。。こりゃかなわんと禁止されていた煙草を隠れて吸った。煙草が暖かいと思ったのは初めてである。煙草を吹かしていると、近くで 『beerだ~ !! 』 という声が聞こえた。どうも知り合いのトルコ人らしい。おいおい、こんな寒いのにビール飲むなよ。。と思っていたら、どうやら 『beer『 でなく 『bear』 であった。。え。。熊出たの?と思ったが、これがかわいい子熊さんであった。。だが熊は熊である。熊田曜子ではないのである。。えらいこっちゃとは思ったが、どうやら子熊さんも寒いらしく、キャンプファイアーの近くでごろごろしている。だが、いまさら逃げようがない。。なので、バンガローで死んだふりして寝た。。隣には校長先生がいびきをかいていた。。

   翌日は朝、3時に目が覚めた。。寒くて死んでいるか、熊さんに夜這いをかけられるんじゃないかと思ったりしたが、なんとか無事であった。この日は朝からお馬さんに乗ってくれと言われた。人生初のお馬さんに乗るのである。テンションが上がった。何となくだが、馬に乗って平地をてくてく歩くんだろうと思っていたのだが、あらどっこい。。そんなにアメリカさんはヤワじゃない。。山の崖道を上るのである。。もちろん手摺りなどはない。馬さん暴れたら崖から落ちるのである。『まだ死にたくない』と言ってはみたが、スタッフなので行かなくてはイカンらしい。。

  2mほどの道をガンガン馬さんは登っていくのだが、こっちは手綱を握っているだけで精一杯。。実に危ない。。日本だと大抵コースは1周ぐるりと回るコースを設定するのだろうが、アメリカ人はそうではない。3時間ほど登った山で、急に前方の尻の大きなアメリカ女が、『ターン』 と言いった。。おいおい。。ここは 2m の細道じゃないか。。とは思ったが、何とかお馬さんとターンし、キャンプ地へ帰った。。気が付けば既に10時を回っていた。6時間もお馬さんに乗らされていた事になる。。お馬さんから下りたら、どうも内ももががくがくである。これほどお馬さんが疲れるモンだとは思わなかった。。また、どうしてアメリカ人はトイレ休憩というものを考えないんかと思った。。だって気温はマイナスだよ。。きっと太りすぎて尿道が麻痺しているんだろうと思った。

   後悔の連続だったヨセミテ公園は、僕の人生では最悪の旅とであった。だがその美しさはハンパないのは確かである。これほど空気が澄んでいる場所は日本にはないとは思う。

   ただ秋には行くもんじゃない。。よい子は初夏に行きましょう。


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教え頂けると、ありがたいです。
母親が行きたいとダダこねてるので、
いつか連れて行こうとは思います。.

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