2013年2月11日月曜日

料理が楽しい台所のある家

   我が家の庭先にある梅の木が咲き始めた。僕が住む宮崎はそんな季節となっている。母親が言うには、これで蜂が来てくれなければ、美味しい梅干しが作れないそうだ。母親は毎年 『醤油漬け』 をつくる。作り方はいたって簡単で、青梅を容器に入れてそれに醤油を注ぐ。そして20日ほど冷暗室などで保存したら、醤油のほんのりした味わいが残る梅干しが出来上がる。この梅干しはご飯のおともに、また梅を漬けておいた 『梅醤油』 は刺身などに付けると、梅の香りがちょっぴり残る薄口の醤油となり、とても凄く美味だ。僕は漬け物などが好きで、自分が設計するお家には、できるかぎりそれ専用の室を設けたいと考えている。最近設計したお家にもパントリーを設けようとした。パントリーとは、直接的には食器室。だが、それだけでは意味合いでは勿体ない。単に食器を隠すスペースとしてではなく、料理を楽しむための台所の補助室とした。台所はもうちょっと楽しめないかと日々考えている。

   そもそも日本の伝統的な台所は暗くて、寒い。だが、それはそれで合理的には出来ている。今のように冷暖房設備がない時代は、食品が腐りやすいので北側に配置していたわけだ。それに日本建築様式には思想としての 『ハレ』 と 『ケ』 がある。プライベートである 『褻(ケ)』 の室にあたる台所は、お客の見えない場所に置いたわけだ。僕はこれはこれで一つのスタイルなので、格段非難するつもりはない。僕の幼い頃ぐらいまでは、男子は台所に近づかずといった考えがあったが、時代は変わった。男子も料理は好きなのだ。だが家の中央へ移動してきた現代の日本の台所はとても狭いし、雑多だし、どうも好きにはなれない。どうも未だ、生活様式としての 『褻(ケ)』 の考えが抜け切れていないようだ。

   工務店などに勤めていると、お客さんに必ず言われる事がある。 『カウンターキッチンにして下さい』 お客さんは一般の方々だからしょうがない。どうもカウンターキッチン=おしゃれと思われているようだ。カウンターキッチンにもいろんな種類があるが、安い金額のカウンターキッチンなど取り付けたら、結局は食器などを置くスペースが狭くなる。また醤油や新聞などをカウンターの上に置くようになり、ラーメン屋さんのカウンターのような、カッピかぴの新聞が置いてある昭和の香りが漂うカウンターとなってしまう。それにカウンターキッチンを頼まれる方々は奥さんが一人で料理するのが前提であり、お客さんなどを呼びパーティーなどもできるといった予定では作られてはいない。またそういったカウンターを要求する方々は旦那さんが大きなリビングを欲しがる場合が多い。要するに未だに台所は 『褻(ケ)』 であり、リビングは 『ハレ』 なのだ。

   僕が一戸建て住宅を設計する場合、『ケ』 である台所ではなく 『ハレ』 である台所として設計するように心がけている。僕が美しいと考える生活様式とは、男も料理ができ、また大勢のお客が来ても対応できる 『ハレ』 の台所ある事が大前提だ。出来るだけ大きな空間を料理を作る台所にとり、そしてそれをオープンな形とし、その脇に食堂を置く。台所には料理の本だっておけるスペースが欲しいし、子供らが勉強するスペースがあっても良い。そして台所の横にはパントリーなどの個室を配置した方がよい。そのパントリーはもちろん食器庫という意味合いもあるが、女性用の書斎と考えてもよい。もちろんネットを引いても良いだろう。昔は台所は女性の城などと言われたりしたが、現代のその城は男にも開放されるべきで、その代わりの女性の城を持っても良い時代だと思う。

   昔と違い、男性だって料理する時代だ。皆が楽しく料理できる台所があった方が楽しいと思うし、健康に暮らせる気がする。へたにリビングを大きくしたって、どうせテレビを見るだけなんだし、それに日本人はごろりとソファーに寝ながらテレビを見たがる昨今、リビングは 『ハレ』 のスペースとしてよりも 『ケ』 のスペースとして設計した方が良い。つまりリビングは家の真ん中でなくても別にかまわないという事だ。だがほとんどの現代の家々はそんな 『ハレ』 の台所があるわけではなく、相変わらず 『ハレ』 はリビングとなっている。これでは人生が面白くないと僕は思っている。

   男も料理したくなる台所でなければ、そのうち男どもはテレビの前で焼酎飲みだすに決まっているじゃないか。。

   そんな事を考えている。

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