2013年2月1日金曜日

古民家が積極的

   設計のお仕事をしていると家々の現状がよく見えてくるもので、最近の新築の建物のちゃっちさは見ていて辛くなる。ウっとりするような新築はとても少なく、僕が住む宮崎などでは、とてもウっとりなどは出来ない。僕には品のある家が以前よりも少なくなっている気がしている。同じようなサイディングの壁に同じような対面型キッチン。そして洗濯物が干せるウッドデッキ。それはそれなりに機能的に出来ているし、昔の家々よりも生活環境としては快適だろう。だがウっとりはしない。歴史がなせるものか、不思議な物で昔の古い建物には目がいってしまい、うっとりする。その家々は作った当時から大きなお金をつぎ込んだ建物が多い。建物をしっかりと作っているという事だ。それにその家に住まわれる方々がしっかりと手入れされている家だからこそ、よい雰囲気をだしていると思う。僕が幼い頃などは、朝起きたら廊下や柱を雑巾がけさせられたものだ。なので柱という柱はピッカぴか。そんな家々は少なくなった。

   都会の方々が考えるような日本の田舎の家は少なくなった。やはりそれは全国一律で安価の商品であるサイディングなどが普及してきたからと言えるし、経済が良かったので新しい家を次々に作ったからとも言える。10年ぐらい前までは新築の建物があちらこちらで建っていたのが普通だったので、もちろん設計などに時間はかけれず、安易な間取りでハウスメーカーが安易に家を作っていった。経済が小さくなった今はもっと安易に作る事によって多くの建築会社が生き残りをかけている。よって日本の田舎は普通の町となってしまった。だが少しモチベーションが高い建築メーカーや設計屋がこれではいけないと考えるようになってきた。何とか古い家々を再評価しようと動きだした。良い流れだとは思うが、まだ主流にはなりきれてはいない。なぜならそれで企業の業績があがるかと言えばそうでないからだ。

   僕の知っている宮崎の工務店が古民家再生プロジェクトを立ち上げてやっている。要はリフォームなんだが、気が付けば新築より高いと評判はよろしくない。元々しっかりとお金と手間をかけて作った家なら、それなりに再生がスムーズに行くだろう。だが、もともと30年が寿命と考えて作った家や、そもそもメンテナンスをしっかりやっていないご家庭の家はシロアリや雨漏りが甚だしい。よっていざ解体した時に欠陥が見つかり、それの補修がかかってしまう。なのでどうしてもそこから料金が余計にかかってしまう。なのでそのプロジェクトは評判が落ちてしまい、上手くは回っていない。それに、センスも今ひとつだし。。

   一昨年の冬にとある宮崎の工務店をひやかし半分で受けた。1週間後、社長さんから電話があり言われた。 『飲みに行かないか?』 『あの。。受かったんですかね。。』 と聞くと 『どっちでも良いよ』 と言われた。。その社長に色々と教えてもらったのだが、その中に古民家鑑定士という資格があった。どうやら古民家鑑定士というものは不動産としての古民家の価値ではなく、文化的な価値から建物を見るという前提があるそうだ。もちろんその構造はどうだとか、実際に修復してたらこれくらいの価値で売却できるなどの相談も出来る。それに古民家売買のネット登録などの手配できるらしい。う~ん僕好みの資格だ。だが、現実には商売としては成り立ちにくく、なんとか上手くできないか模索中なんだそうだ。世の中には同じような事を考えていらっしゃる方々がいてちょっと嬉しくなったのを覚えている。

   家いう箱物を資産として考えた場合、新たに建てて22年も建てば不動産としての価値はゼロ円となってしまう。実際、不動産鑑定の現実はそうなっている。だが、それではおかしいと多くの人々が気づきだした。品のある家を最初に作れば、それなりの価値を保たせる事が出来る時代になってきたようだ。僕がやるホームインスペクションもそうだし、耐震診断もこの古民家鑑定士もそうだろう。積極的に価値ある家を生みだし、そして次世代に良い環境の町を提供するのが僕らの仕事だと、ちょっとだけ思っている。

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