2012年10月16日火曜日

設計屋のたわごと

こんな気分だ!
   僕は工務店の中で設計を一任されている。工務店と設計屋は、元来別の方向を向いている。同じく建物を作るのがお仕事だが、相性が良い間柄の職業とは言いがたい。設計する側から見れば、工務店の大工さんらは単なる肉体労働者だが、大工さんから見れば設計屋は単なる絵描き。大工から見れば設計屋は金槌も使えないのか!となるが、設計屋から見れば、建物の本など読んだことないのに!となる。なので普通に工務店内部で設計などしようもんなら、時間をかけるわけにはいかない。良質の建物を造ると言うことはそれなりのコストと時間がかかってしまう。だが工務店はそれを嫌う。工務店は作ってナンボの世界だからだ。これは大工さんの給料が高いという事にも関係していると思う。だが、ありがたいことに僕は工務店の中でも半分独立して設計をやらされる事になった。まあ給料的には上がる場合もあるし下がる場合もある。だが、僕の中では給料よりも、良いカタチを追求する方が本来の職分としてありがたい。納得しないままに間取りだけ決めて工事にかかるのは心が痛いからだ。

   ありがたいことに仕事が舞い込んだ。舞い込んだと言っても、以前からのお客さま。以前建てようとしていた建物が、土地の問題でおじゃんになったので他の場所に家を建てることになったからだ。土地が変わるという事は、その窓から見える景色も違えば空気も違う。もちろん人の流れも違う。工務店的に言えば、 『前の建物と同じでいいんじゃねぇ?』 かもしれないが、設計屋的に言えば全て一から考え直さねば、住む人がかわいそうだ。設計とは人が建物を形作ると言うよりは、場所が建物の形状を選ぶ。そんな気がしている。

ぼんやりとだが、こんな菜園も良い。。
   以前、お客様に提出した図面は土地は南側の土地が開けていたため、南側に大きなウッドデッキをプランとして入れていた。大きさはウッドデッキだけで24帖はあったと思う。だが今度の敷地は周りを家が囲んでいる。北側には決して綺麗とは言えない水路があり、前面道路も美しさには欠ける。この小さな小さな敷地に本格的なプランニングをしてあげようと思っている。

   多くの設計屋は 『どのような ”作品” を残すかだよね』 とよく言う。だが、この ”作品” と言う考えは僕はあまり好きではない。その ”作品” を多く作ってきたせいで、日本の景観はごちゃごちゃになった気がするからだ。僕は自己主張しだらけの街並みが嫌いになり、どこか厭世的というか憂鬱な気分を持ってこの設計の世界に入った。なので、快適さだけで家々を作るつもりはさらさらないし、涼しげな顔して ”作品” と言うのはどうもしゃくにさわる。

   建物を作るにはコンセプトが必要となる。僕の恩師が言っていた。コンセプトさえ決まれば、後は根性で図面を書く。な~に言っているんだ爺さん!と当時は思っていたりしたモンだが、設計に携わりながら確かにそうだと最近は思うようになってきた。恩師の言葉とはつくづくありがたいものだ。次の施主の夢は自家菜園を作る事なんだそうだ。工務店的に言えば、庭の事まで考える必要はない。だが僕は工務店の中でも半分独立した設計屋。素敵な畑を作れるようプランを作ろうと心に決めている。

   先ほどまで施主さんと電話でお話をしていた。最後に 『いい家を作りましょう』 と言って電話を切った。

   さあ、気合いが入ってきたぞ。

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