2013年1月26日土曜日

庭と厠(かわや)

   僕が住む宮崎の実家のトイレが、文明開化したのは高2の春だった。それまでは、汲(くみ)取り式の便所。俗名すっトン便所であった。幼い頃などはその下方にある穴が地獄に繋がっているようでそら恐ろしく、とても一人で行けたものではなかった。なので毎度の事、今は年老いた婆さんに連れて行ってもらっていた。もちろん洋式便所は宮崎の田舎で育ったと言え、知識としてはあった。だが、慣れない物は使いずらいもので、外国かぶれの洋式便所なんぞは使わなかった。だが、友人の家に行った時に決断を迫られた。そのお家には小便器がなく、洋式便所で男の子は用を足さねばならない。だが、ビビって 『どうやってすんの?』 と聞くわけにもいかず、まただがどうやって用をたして良いかもわからず、訳も分らず座って用をたした。しかし、壁際にはボタンがあるのだが、どれで水を流せばわからず、とあるボタンをポチッと押してびっくり。。人生初のウォシュレットである。マーライオンの気持ちが少し分った中三の春だった。。

   トイレはもちろんの事だが臭気が発生する。これを外に出すために現在のトイレには必ずといって良いほどに換気扇がついている。第3種機械排気とも呼び、トイレ内部の空気を強制的に廃棄する方法だ。建築士の試験などでは必ず付けるのだが、実は窓を付ければそれで済む。だが、工務店的にはもちろんそんな事は通常しない。手を抜いたと思われたくないからだ。

   昔はもちろん換気扇などはもちろんなく、窓は通常格子戸だけ設けていたところが多い。京都のお寺などのトイレを使ってみると未だにガラスも入っていない格子戸だけのトイレは結構ある。だがそれはお寺などのちょっとお金のある家々が多い形式だ。通常庶民は、ガラス戸はもちろん格子戸もないたんなる箱の中で用を足していた。もちろん臭気が発生しても問題にならないよう、離れにそれをもうけている場合が多い。実際、僕の親戚が宮崎県北部にある日の影という山間部に住んでいるのだが、これがまさにそんなトイレ。。否、厠(かわや)だ。

   昔の人々は建物内部にあるトイレには憧れはなかったのだろうか。その辺は分らない。だが僕は親戚のお家にお邪魔する度にその外部にあるトイレを使わせてもらう。それはそれで贅沢なことなんではないだろうかとさえ最近思って来た。もちろん雨の時は傘をさす必要だってあるし、もちろん古いお家なので衛生的にもどうなのかとも思う。だが、そういった問題を解決すればちょっと面白いような気がしている。

   現在スモールハウスを設計しているのだが、そんな外部にあるトイレがちょっとだけ気になっている。もちろんセキュリティーの問題もある。家に2つも鍵をしなくてはならないのは不便だからだ。特それにトイレが外部にある必要性は現代では特にない。だがスモールハウスはとても小さいので外部と一体的に作る事により広く感じると思う。

   なんとか面白い設計は出来ないかと考えていたら、ふとそんな事を考えた。そして、最後に気づいた。女性は嫌がるだろうと。。

   やっぱり辞めた。。

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