2013年10月9日水曜日

価格が見える家づくり 分離発注方式

   僕がアメリカに住んでいた頃、僕の上司が家を建てた。その当時の僕は建築設計の仕事をいづれ携わるとは夢にも思っていなかったので、新築のパーティーに呼ばれた時などは単にわーきゃー言っていただけだ。その家は実にこだわっていて実に美しく、僕の同僚などは上司に建築家の名前や聞いていた。すると上司が『彼もパーティーに来るよ』と言った。人生で初めて見た建築家は笑顔が爽やかな方であった。彼が来ると同僚などが、『どうしてこんなプランなの?』などと聞いている。その後、僕はその建築家の方とお話させて頂いた。僕が日本人だと聞くと彼は日本の建築事情について聞いてきた。日本の建築家のこと、そして日本はどんな流れで家づくりをしていくのか?そんな事を聞かれた。だが当時僕はあくまで駆け出しの記者であり、建築に対してはズブの素人。また家を作るなど考えた事はないし、興味もないので日本の建築家については1人も知らない。だが日本で家を作るなら”might be Home Builder(工務店の事) or House Maker" じゃね?と答えた。

   すると日本勤務が長がく、日本で中古住宅をリフォームして暮らしていた僕の上司が話に乗ってきた。『日本は工務店かハウスメーカーが普通だね』と彼は言った。すると建築家が不思議なな顔をした。『工務店とかハウスメーカーって多いの?値段が高くなるじゃん?』と僕に向かって聞いてきた。だが僕はそんな事を聞かれても"really?"としか答えられない。すると上司が『アメリカやヨーロッパは日本と違い、工務店やハウスメーカーで新築を作ることは少ない』と教えてくれた。言われてみれば、確かに僕はアメリカに7年住んでいたが、工務店とかハウスメーカーの店舗は1度も見た事がない。

   日本で家を作る場合、頼む相手はハウスメーカーさん、工務店さん、または設計事務所。まあこの3つであろう。ハウスメーカーの場合、大抵は家主はその展示会場へ行き、自分の理想の家を作ってくれるハウスメーカーはどこか物色して、それからご相談となる。それから営業さんと間取りを決め、見積金額を持って来てもらい契約が終われば着工となる。工務店の場合は、今まで作った家を見たり評判を聞いたりして間取りを叩き上げ、そして見積もりを作り着工。設計事務所の場合は、まず相談を受け、基本設計で間取りを決めたり模型を作ったりし、実際に入れる住宅機器を一緒に見たりしてそれを詳細図面に反映させ、そして数社の工務店さんに見積もり依頼し家を作っていく。まあ大体このような流れだ。これらを通常、一括発注方式という。


   だが欧米の場合は日本のような一括発注方式は少ない。新築を作る場合、ハウスメーカーや工務店には行かず、設計事務所にご相談という場合が多い。そこでまず基本設計を作り上げ、そして詳細設計を作り上げる。ここまで日本の設計事務所と流れは同じだ。だがここからが違う。先ほども書いたが日本の設計事務所の場合は価格競争を工務店にして頂き、その工務店が作った見積もりをもって工事契約となる。その工務店の見積もりの中には、その下請け業者である左官さんや建具屋さんが、元請けである工務店に提出した金額に一定の割合をのせて提出している。それが工務店さんの儲けである。だがアメリカの場合は、その元請けとなる工務店がいない。つまり大工工事の見積もり、左官さんの見積もり、そして建具屋さんの見積もりが直接家主に来る。つまり中間の儲けをなくして安く作るという事である。この方式を分離発注方式という。

   分離発注の大きなメリットとして中間マージンがかからないという事である。直接見積もりが各専門家から来るわけで、またその専門家に相見積もりをかけるからなおさら安くなるのは確かである。つまり『価格が見える』というのが大きなポイントだ。また設計事務所が本気を出せるのも分離発注の大きな特徴かも知れない。

   現在、日本では一括発注が主流ではあるが、だが少し前までは決してそうではなく、結構な割合で分離発注であった。大工さんや職人さんらには直接家主が日当を払っていたからだ。ではなぜその方式が日本で廃れたのか?色んな理由がある。またそれは長くなるので、明日にでも書こうと思う。

   分離発注にはもちろん大きなメリットもあるが、デメリットもある。だがそのデメリットを解消する仕組みも最近は出来上がってきたようである。これから日本は分離発注が増えていくかは分らない。だがこの分離発注は確実に伸びてくると仲間の設計屋とは話をしている。

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参考までに分りやすい漫画を貼っておきます。
http://www.iehito.co.jp/comics/book.html

2 件のコメント:

  1. 昔、宅建で施主と請負人の瑕疵担保・危険負担覚えたなー。
    一括と分離の違いって係争になった場合の登場人物が少なくて済むかどうかでしょうか?

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  2. コメントいつもありがとうございます。
    そのへんについて今日ぐらいに続きを書こうと思います。
    まだ日本では発展途上の形式のため、立場により肯定的であったり、否定的であったりしているようですね。
    裁判などになった場合どうするのか?
    依頼主と直に契約した、各専門業者が、それぞれの責任で保証となるのが多いと思います。
    ですのでどこに不具合が出ているのかを見極めるのが重要で、海外ではホームインスペクションを引き渡し前に入れて調べるようですね。
    ですが、これから注目度が上がる方式ではあると思います。
    コレが海外では普通のカタチですので。
    ちなみに日本の公共工事の設備に関しては分離発注が当たり前のようになっています。
    それだけメリットがあるという事でしょうね。

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