2013年10月10日木曜日

家を安く 価格の見える家づくり 分離発注方式

   昨日書いたように、戸建て住宅を建てる場合の分離発注方式とは、工事全体をまとめてハウスメーカーや工務店に頼む一括発注方式ではなく、大工さんや建具屋さんや板金屋などのような実際に工事を行う専門業者に、依頼者が直接頼んで建設する手法だ。CM(Construction Management)分離発注方式とも言う。通常ハウスメーカーや工務店の場合、図面が出来上がると下請け業者である内装屋や左官屋などから見積もりをとる。そしてその上がってきた見積もりに一定の割合をかけて見積もりを作る。この一定の割合がHMや工務店の儲けであり、営業さんや設計料金や現場管理料(いわゆる現場監督の給料)、そして何か問題があった場合の保証料金も含まれる。分離発注方式の場合、その一定の割合を省くことにより家を安く作るのがメリットである。だが家とは誰かがスムーズに工事が進むよう音頭をとる必要がある。では誰がやるかと言えば基本は家主本人である。

   と言われても一般の方々は建物の建て方の知識があるわけではない。ではどうするかと言えば、設計事務所が家主をサポートするカタチが多いようだ。なので分離発注方式を採用する場合、設計事務所の通常業務である設計・監理に加え、CM契約をするのが一般的である。このCM契約により設計事務所が依頼主をサポートし、どの専門業者にどのタイミングでどのような順番で現場に入ってもらうかなど各専門業者のとりまとめや調整を行う事となる。もちろん保険などの加入などもその時に設計事務所から説明を受けることとなる。

   一般的に言われる事だが、一括発注方式とは違い、各専門業者に分離して発注するわけで、責任の所在が曖昧になる危険性がつきまとう。なので分離一括方式の場合は通常の契約とは違い、独自の契約をとるスタイルが多いようだ。例えば、戸建て住宅などの工事とは、基礎が終わると木工事、そして屋根工事へと。。のようなリレー作業である。工事中に後から入る業者が前の工事結果を見て問題がある場合は、すぐに申し出をする義務を持ち、前の業者に無償で是正させるという契約になっていたりするようである。また万一のための専門の補償も既にあり、依頼主が困らないように整えてあるようではある。

   また請け負う設計事務所の人間がどれほど現場の流れに慣れているのか、または、CM自体のサポートに精通しているのかも重要だ。だがそのノウハウを教えている業者は既にあるようで、皆さんそこでよく勉強をされているようではある。だが結局は人が家を作るわけで、請け負う設計事務所の力量がとても問われる事となるとだろう。また通常設計事務所で家を作る場合は、設計事務所が図面を作り、値段で勝った工務店が現場管理をし、設計事務所が設計監理(図面通り作っているか第三者としてのチェック作業)をするのだが、分離発注の場合は直接発注方式と違い、実質上依頼者が現場監督となるわけで、設計事務所が動くウェイトがとても大きい。よって、第三者としての設計事務所でいれるのかはとても疑問が残ると僕は思っている。


   また分離発注方式の場合は家主が相当動かなくてはならない。契約だけでも通常1社とするところを20社ほどとせねばならず、依頼者に相当な時間的な手間がかかるのはやむを得ない。また現場を仕切る工務店を外すわけであり、流れがスムーズに行かず工期が長くなるだろう事は予想される。また分離発注方式に慣れていない業者も多く、その選定だけでも結構な時間がとられるだろう。

   だがあり合わせの図面とカタログで家を買うという意識の方には向かないだろうが、一生に一度の事であるので、自分も家造りに参加したい、自分の家を徹底的に知りたいという方々には向いている方式かも知れない。また建材を直接家主が仕入れる事も可能ではあるし、すでに分離発注方式に向いたフラット35もある。また、それ専用の補償もあるしサポートする業者もいる。それに家自体が安く出来上がるのは確かだろう。

   経験した事がある方はよく分るだろうが、家造りにはもの凄いエネルギーが必要である。明らかに一括発注方式の方が楽ではある。だが『値段が見える家づくり』をするにはこの分離発注方式意外にはありえないとは思っている。

   以前は日本でも分割方式が結構な割合であった。だが昔から日本は建築家が家を作るという慣習はなく、大工の棟梁が家を建てるという意識が強かった事、またその責任の曖昧さや家主の負担が大きいなどの理由で廃れたのだろうと思う。

   最近、設計の人間と話すとポツリポツリとこの方式の話題が出る。どうやら皆興味はあるらしい。また知り合いの非工務店所属の一人大工もこの方式に興味を持っているようで、色々僕に聞いてくる。工務店やハウスメーカーにもよるが、彼らは『この家の大工工事はいくらでお願いね』と言われ家を作らせられる。彼らは見積もりを出して競うのはかまわないが、これだと給料を叩かれるだけなので嫌なようだ。分離発注方式だと、下請けではなく元請けになるので自分の名前が上がるからやりたいと言っていた。

   これから欧米のようにこの方式が主流になるのかは分らない。だが一つの選択肢としての分離発注方式だとは思っている。

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2 件のコメント:

  1. こんにちは\(^▽^)/!
    ウチはこれ(分離発注)で建て替えました!^^
    たしかに、かかる費用は大幅!に抑えられてるなぁと思いますが、かかる時間と手間はすごい!です^^
    けど、おっしゃるように、一生に一度(たぶn)のシゴトですしね^^
    大工さんを探してもらって、天然乾燥+通し貫きでと・・・余計ややこしいことになりましたが、住み心地は抜群! 充分に家を堪能させていただいております。
    昔の棟梁さんの仕事を建築士さんがなさってるとか、われわれ一般の人間は知らないしねぇ。こういう建て方が世界的には主流だとか・・・こんなところも、ガラパゴスニッポンの一端があるのかね?と・・・
    広くて深い知識・経験を持ってる建築士たちの能力・役割を、もっともっと世の中に拡めなくちゃいかん!!!ですね^^

    ※建築士さんとは、その後もなにかと交友させていただいておりまして、
     勉強にもなるし楽しく過ごしてます^^
     

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  2. コメントありがとうございます。
    確かに手間はどう考えてもかかると思います。
    棟梁がやる仕事の一部を自分でしなくてはならないですからね。
    ですが、設計する人間と直でじっくり話し合うことが出来きるのは、この方式であるのは間違いないと思います。
    工務店やハウスメーカーではどうしても第三者となりえないし、工務店やハウスメーカーの論理で進めざるおえんからですね。。
    建築士との交流は良いことだと思いますよ。
    建築士は幅広い知識を持ってますし、提案力をもの凄く持っていますしね。
    出なければ食っていけない仕事でもありますんで。。

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