その昔、僕は当時アトリエ系の設計事務所にいたのだが、とある工務店の社長さんから直接僕に電話を頂いた。内容は京都の真ん中にある町家を改修して、長屋風の集合住宅を作るという物。自分とこの設計士では手に終えないと思ったらしく、以前仕事で一緒だった僕に連絡してきたわけだ。そこで僕の事務所と施主さんとで打ち合わせをしたいので、場所はどこが良いか?と僕に聞いてきた。 『それじゃStarbucksでどうでしょう?』 と応えたのだが、 『何ね。。ドイツか?』 と言われた。社長さんは当時80歳を超えた元日本兵。どうも Starbucks という響きがドイツと思ったらしく、元同盟国のならと喜んでいた。 『いやいや社長、コーヒー屋です』 というと、 『それなら俺の行きつけの店の方がよい』 と言われた。嫌な予感したのだが、お迎えに来た社員さんが運転するベンツに乗せられ着いて行った場所は、一見さんお断わりの料亭。いわゆるお座敷だ。
先に来ていた50代の施主である旦那さんとアルマーニを着こなす元日本兵の棟梁は、すでに酒が入っていて出来上がっている。そして横では舞妓さ~んが踊ってはった。社長と旦那さんは正直もう図面などはどうでも良いらしく、舞妓さんにうっとり。。なぜか酒も入っていない僕もうっとり。。なのでどうも打ち合わせなどする気が起こらない。。もうどうしようもないので、じゃあ次回は Starbucks でという事になり、僕は21歳の女性インテリアコーディネーターに白い目で見られながら、舞妓さんにお酒をついでもらってて上機嫌。そして社長さんの下ネタが冴えまくり、お座敷が盛り上がり、ハイご契約。まだ図面も決まっていないのに。。まあ、社長さんの人柄だろう。
またある日、僕の設計事務所で別のお客さんと打ち合わせをしていたのだが、知り合いの工務店で施工できないか?と聞いてきた。設計事務所の人間は設計がお仕事なので、施工業者は別にどこでも良い。だがハイと図面を渡せば良いわけではない。また僕の事務所ではその工務店さんとは初めてのお仕事。よって僕は名刺をもってお客さんと一緒にその工務店まで行ってきたのだが、この事務所が異様だった。
その事務所の玄関はたんなるガラスのサッシ引き戸が2枚あるだけで、工務店としてこれで良いのかという作り。またそのサッシから奧に1.5メートルぐらいの所にカウンターがある。横幅10メートルに1.5メートルなので、設計屋である僕らからみればとても狭い応接のスペースだ。だが異様なのはその壁の部分。サッシ以外は全て写真が貼ってある。その写真はどうやら家が完成し、引き渡しの時の様子なのだが、そこに映っているのは、その工務店の社長さんと事務員さん、そして施主さん夫婦に大工さんら全員が、万歳をしていた。200枚ぐらいはあったと記憶している。その写真の社長さんの目は超輝いているのだが、施主さんと大工さんらは目が超死んでいた。これが事務所の壁という壁全てに貼ってある。。大丈夫かこの工務店。。と思ってたのだが、社長さんのお話が面白い。気が付けば2時間ぐらいはいたはずだ。この社長さん、関西では有名らしく、テレビなどで耐震診断などの特集があれば必ず出演される。どうやってお客さんはこの社長さんを知ったのかは未だに謎だが、まあ仕事が早い社長さんだった。。
世の中には色んな面白い社長さんらがたくさんいるとは思うが、建築業界ほど変な社長さんらはいないだろうと思う。よう~これで会社やってこれたなという人も多いが、時代がそれを許容したのかもしれない。
今からの時代は生きにくかもしれないが、僕はそんな方々に恵まれてきた気がする。。
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