2013年3月4日月曜日

犬走りは何のため?

お城の犬走り
   昨日も書いたが、現在宮崎は西都市で僕が設計した一戸建て新築を作っている。基礎コンクリートの立ち上がりも終わり、さあこれからという段階に入ってきた。この建物を設計している段階で施主さんと、ちょっとだけだがもめた場所がある。犬走りだ。僕は必要ないと言い、施主さんは周りがそうしているから犬走りは絶対に欲しいと言う。 『いやいや、構造的にも意味はないから、鉄筋はいれないので別に必要ないし。。それに予算が。。』 と言うと 『鉄筋も入れてください』 と言われた。鉄筋を入れた犬走りってそんなもんありゃしない。。何とか断り、その場は収まったのだが、会社の方に直接施主さんが連絡されて犬走りを作ることになってしまった。もちろん鉄筋などは入れてはないが。。う~ん犬走りに10万以上かけるほどの事はないのだが。。

   そもそも犬走りは何のためにあるのか?その昔、日本の屋根には雨どいがなかった。雨はダダもれで地面にぶつかるようになっている構造だった。古いお寺などにはその屋根の外周部の下に穴を掘り、そこへ雨水を受けていた。それが美しい雨水のおさめ方だったからだ。だがすべての家にそんな贅沢はできない。もちろん普通の家々は雨水は地面にダイレクトに落ち、そして地面の土と雨水の混ざった泥水が基礎や壁にぶち当たっていた。この泥水が基礎や壁を汚すし、それに昔の家はコンクリートの基礎ではなく、木の基礎だ。泥水が基礎を腐らせる原因ともなりえた。これらの諸問題を少しでも緩和するために、犬走りはあるといえる。コンクリートの基礎となった現在でも、その名残が残っているので犬走りが使われ続けているわけだ。

こっちの方がいいでしょ
   だがコンクリート基礎となった今、基礎はもちろん腐らない。では犬走りをなぜ作るかと言えば、その上を歩けるからとか、周りがそうしているからという理由が一番多い。それに業者としては利益を多くとれるし、それに先に犬走りを作ってしまえば足場などを設ける場合、地面よりは固いため安定する。よって作った方が工事がしやすい。もちろんメンテナンスする場合だって足場が組みやすいので大工さんはちょっとだけ楽ができる。まあ、そんなところだ。

   だが雨どいも標準となった現在の家に、犬走りが必要かと言えばそうでもない気がする。泥水の跳ね返りを防ぐには、砂利やウッドチップをまけば十分抑えることができるし、歩くためだけに犬走りをこしらえるぐらいなら、もう少しおしゃれなウォーキングスペースを設ければ済むことだ。それに防犯上、コンクリートの犬走りは良いとは言えない。少なくとも覗きなどの犯罪には、犬走りよりも砂利の方が音が鳴るので、犯罪者は近づきにくくなるだろう。それに鉄筋が入っていない部分なので、大きな地震などが来たら真っ先に割れてしまうのが犬走りだ。今回の東日本大震災では多くの犬走りが真っ先に割れた。そこに雨水が侵入し、その直下の地盤に水の道ができれば家の下にトンネルができる可能性もある。むしろない方が家には良い気が僕にはしている。

   犬走りはコンクリートを打ち込めばできるというものではなく、左官さんがその上を化粧したりするので結構な料金となるもの。そういったところにお金をかけるのなら、他にかけた方が良いと僕は思う。少なくとも周りがそうしているという理由ではもったいない事極まりない。

   まあ、作っているんだが。。

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