2013年3月18日月曜日

風をデザインする

   以前にも書いたが、通常工務店などで家を作る場合、その棟梁が30分ぐらいで叩き台を作る。そしてお客さんと打ち合わせをし、変更する場合はその場で変更し、ハイご契約となる。その図面は大抵お決まりの間取りだ。南側にリビングがあり、そして北側に和室やキッチン水回り。まあそんなスタンダードな図面となる。その図面を元に建材屋さんなどでカタログを借りてきて、玄関やサッシなどの色を決め着工となる。確認申請作業だけが設計屋のお仕事。設計屋は約12万~20万で確認申請作業を請け負うこととなる。僕が住む宮崎などの家はその大方がこんな具合に作られている。大工さんらが作る30分の家はもちろん無料だが、僕ら設計をやる人間はそうはいかない。と言うのも僕らはコンセプトを施主さんからまず頂き、そして土地や町のカタチや色から施主さんにあった家を提案するのがお仕事。なので毎度の事、最低1月ぐらいは悩みましょうと提案している。一生住むであろう家を実は30分で設計している事をほとんどの人々は知らない。そんな家を設計をする際、大工さんらは風水を気にされる方が多い。だが設計屋は通常、風水は全く気にはしない。僕が住む宮崎などでは設計屋が最初に気にするべきは、太陽の角度や風の向きだろう。太陽についてはまたいづれ書くとして、今日は風と家について書こうと思う。所謂、建築設計の基本のキだ。意外と大工さんは知らんのだが。。

   吉田兼好はその著書である徒然草で 『家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。』 と言った。冬はどんな場所でも住めるものだが、夏の猛暑は我慢はできない。なので住宅は夏をもってむねとすべしって事だ。

   僕が設計する場合、風の向きを探ることから始める。一般的にだが、日中の風は海から吹く海風。そして夜間の風は山から吹き下ろす山風と言われている。だが実は建てる家の周辺環境で風は方向を変える。なのでその敷地に吹く風はどちらからが多いか、設計する者はよく見極める必要があると思っている。あくまで参考だが、気象庁のホームページには月ごとの風の向きが、結構細かく市町村ごとに発表されている。この発表されたデータを念頭に入れながら予定敷地に行き、あとはじっくり風を観察している。

   そんな時に忘れてはいけない事が風によって質感が違うという事。たとえば風上に林や芝生などの緑がある場合と、アスファルトの駐車場がある場合はでは、その風の質感は全く違う。夏の夜などに網戸で寝ていたりするとよく分るのだが、緑のゾーンを抜ける風は心地よい。なので網戸と扇風機だけで十分だ。だがアスファルトなどの蓄熱効果が高い人工物の上部を抜ける風は、自然とその温度を吸収するため、室内に入ってきた場合に熱を持っていて不快な風となる。よってクーラーが必要になる。

   家を設計する場合、この風をいかに生かすかが、その家の快適性に大きく左右する。風上に大きな開口部を設け、そしてその風がどの方向に抜けるか考えながら設計すれば、自然と良い家のカタチは出来上がってくる物だ。だがそれを無視して高気密高断熱としている所があまりにも多い。というより、宮崎の田舎の新築でもそれしか最近は見ない。大都市なら理解できる。360度人工物に囲まれているので良い風は吹かない場所が多いからだ。しかし、田舎は決してそうではない。やはり自然の風を使うと使わないとでは電気料金ももちろん違うし、健康面でも精神面でも違うだろう。もちろん高気密高断熱もあった方が良い。だが、それが全てではとても勿体ない気がする。太陽光発電を設置するよりは、最初から設計の段階で窓の配置を考えていた方がよい。

   だが一つだけ風について注意することがある。いくら自然の風が良いと言っても、隣が土の畑の場合だ。畑は土が乾燥していたりすると風でその土は巻き上げられてしまうため、網戸にしていても土が家に入ってきてしまう。また外壁に土が付着するとすぐに外壁は真っ黒になり、それをほったらかすと苔が生えたりする。また雨樋にも土が溜まり出すと、水はけが悪くなり、家の劣化を加速しがちだ。もちろんそんな敷地に家を作ると決まっている場合は、それなりの部材を選ぶ必要がある。またその畑がある方向には出来るだけ背の高い樹木を植えることをお勧めしている。少しでも土が入ってこない方が良いからだ。まあ、その前にその敷地はお辞めなさいと言っている。まあ、そんな土地は安かったりするので皆飛びついてしまうのだが。。

   そんな事を考えながら設計している。そりゃ30分じゃ無理だし、お金をもらわねばやれるお仕事ではない。

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