僕が京都にいた頃、よく工務店の社長さんがきていた。その社長さん、ど~も変わっていて、対応する僕や事務員の姉さま方は困惑したものだ。いつも地下足袋に作業服。そのズボンは手作りのパンタロン。だがそのパンタロンはつぎはぎだらけ。派手な色のつぎはぎ(ストッキングや明らかにトランクス辺も含む。。)でつくられた。パンタロンも凄かったのだが、極めつきはその歯だ。コンクリートで出来ていた。どうやら自分で作ったらしい。歯という物はどうやら縦に生えているのでよだれや唾などが流れるらしいのだが、おやじさんのはそんな溝がないため、ど~も汚い。しかしこの方が結構仕事を持ってくるので、お付き合いをさせて頂いていた。しかしその人がある日、いいのが取れた!といってカブトムシを我が設計事務所にもってきた時は、さすがにもてあました。。まあいい人なんだが。。
まだいる。元受刑者上がりの大工さんだ。これがこの業界はなぜか多い。またまた京都にいた頃、現場に行くと先生、先生といってくるおやじさんがいた。このおやじさん、人をまとめるのが上手いらしく、ポンポン仕事が進むので僕ら設計屋としてもありがたい存在だった。しかし、指がない。昔『や』の付く自営業をされていたのは知っていたのだが、何故大工になったのかはよく分からん。しかしある日『昔は散々悪い事ばかりしていたんですが、捕まってから心を入れ替えましたわ』 と言っていた。なので『何しはりましたん?』 と聞くと『コイ泥棒ですわ』 と言われた。『ああ女関係ですか?』 と聞いたら『いいや、泳ぐコイの方です』 話によると、ある時おやじさんは、池の高級コイを盗もうと忍び込み潜っているところを亭主が帰宅し、通報。そして刑務所に入る事になったそうだ。そこで猛反省。そして出所後、心を入れ替え大工になったそうだ。
まあ、こんな人間がたくさんいる建築業界に僕は席を置いている。もちろん僕の会社ではそんな人間は雇わない。しかし、昔はそんな人でも入れた業界だった。その腕一つで十分のし上がれる業界ではあった事はいえる。しかし、そのような方々がこれからも生きていける業界ではなくなっているのも事実だ。
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