2013年1月16日水曜日

デザインの壁が悩ましい

   以前にも書いたが、スモールハウスを設計中なんだがいきなり詰まった。スモールハウスとは、約3坪から大きくても5坪ぐらいの家だ。その中にはキッチンもあるし風呂だってある。ちゃんと人間が生活するための最低限の設備がそろった家だ。小さいので値段も安く作れる。浄化槽の問題や都市計画区域の関係もあるが、最低200万ぐらいで作れたりする。200万だと家賃5万のアパートの3年分ぐらい。なので作りやすいし、いらんなったら売りやすい。だが普通に作っても面白くはない。普通に作ったところでお客さんは買わんだろうし、僕が許せない。どこかググっとくる家を作ってあげたいので朝からずっと悩んでいる。どうもデザインというお仕事にはデザインの壁のようなものがあり、その壁を乗り越えるまでがとても苦労する。その壁を乗り越えたらすっきりした良い物になるんだが、どうにもこうにも抜け切れずもがき苦しんでいる。物をデザインするとは、自分でもよく分らないものと格闘し、自分を絞り出すようにつかみ取る物だと思っている。って事で、まだ絞り切れていないわけだ。。もそっと絞らねばならんと思いながらグレープフルーツを飲んでいる。。

   仕事がどうにも行き詰まったら、僕はその仕事を寝かすようにしている。机の前でかりかりしてもどうせ出来ない物は出来ないからだ。さっ何しようと思ったら、docomoに金を払いに行くのを忘れていたのを思い出し、自転車を転がしdocomoショップまで行ってきた。そしてその帰りがけの事、ふと道脇に8帖ぐらいの木がある。。あっ、スモールハウスじゃん。。意外に近場に僕が作ろうとしてたものに近いのが建って立っていた。だがそれはもちろん人の家。それほどジロジロ見るわけにもいかん。明らかに不審者だ。カメラは常日頃から持ち歩いてはいるのだが、パシリっと撮るのは良い子だから心がひける。それに遠くからジロジロと僕の母校の中学生カップルなんぞが不審者かという目でこっちを見ている。おい、それが先輩に向ける態度か ! とは言いたくなるが、まあ不審者なんでしょうがない。完全に君らが正しい。。

   その家は外壁まで木造だった。誰が作ったかはよく分らないが、施主さんの希望なのは間違いはないだろう。というのも通常大工さんは外壁はサイディングを使う事が多い。サイディングは経年劣化のくるいも少ないし、それに色落ちしない。だが、木の外壁だと色は落ちるし木が瘦せる。大工さんが喜ぶ美しさとは劣化しない事。なので多分施主さんの希望なんだと思う。また、この家は多分8帖ぐらいだと思うが、とても白いコンクリート基礎があった。そしてその横には犬走り。僕的にはあまりにも白すぎてまぶしく、そして小さな家に犬走りをつけたため、どうも家のバランスが悪い。多分デザイン屋さんは入っていないじゃないだろうか。デザイン屋ならもそっとがんばったはずだ。単に大工さんが頼まれた物を標準的に作っただけといった気がする。もちろんキッチンやらトイレにシャワーなどはついていないだろうが、いい家だと思った。

薪ストーブを入れます
   さすがにジロジロ見ていると、後輩に通報されたらかっこ悪い。なのでその家を後にした。はぁ~はぁ~言いながら自転車をこいでいると、これまた小さな家を発見。ここは道路脇の樹木のためはっきりは見えないのだが、4.5帖ほどしかない小さなお家。きっと子供の寝室か簡単な事務所だろうと思われる。この家はサザエさんのエンディングに出てくるような意匠をした家で、明らかにお父さんの手作りといった感じだった。と言うのも基礎にはブロックが4隅に4つだけ置いてあるからだ。明らかに作り方を間違えている。大工さんだったら親方に怒られクビになるレベルだ。なぜなら明らかにアンカーボルトという基礎と土台を連結する金具はついていなさそうだし、すでに外壁にシロアリの被害が垣間見えるので防蟻処理もされない。それにこんな基礎だと、地震があったらお家が基礎から落ちてしまうのは間違いない。また小さい家のため、場合によっては家が転ぶ。。

   正直言ってスモールハウスなんて誰でもデザインできる。そして日曜大工が好きな人なら簡単に自分で作れる程度のものだ。しかし、よい物を提供するために僕ら設計屋がいるわけで、良いクォリティーで提供しようと思っている。もちろんそこにはちゃんとデザイン力を発揮せねばいけないし、100年ぐらいは持つ家を作らないといけないと思っている。でないとお客さんは買わないし、僕の良心が許さない。だからこそ悩ましい。自分でも訳分らなくなって、そこから物事は始まる。建物が建物になる。まあそんなふうに思っている。

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