2013年1月23日水曜日

建築家のエゴと言い分け

   先週だったか、NHKでSANAAの特集を組んでいたのでそれを見た。実に簡素に番組が仕上がっていた。建築デザインの仕事を1時間の映像で語りつくすのは難しい。建物を作った課程でどのように考えたか。なぜそのカタチにしたのかなどを説明するには1時間では到底足りないからだ。しかし、SANAA建築の美しさの紹介としては良かった。隣で母親が見ていた。これを宮崎辺りのへんぴな場所につくるのはねぇ、お金もないし。。などと言っていた。そりゃそうだ。一般的な工務店が世界的建築デザイナーの作る物を作れるかと言えば無理があるし、そんなお金をはたいてくれる施主さんは中々いない。それに宮崎の町中がデザイナーだらけの家だったら景観の統一という面でそら恐ろしい。パリコレクションなどの服飾デザインなどもそうだろう。あれはデザイン屋がこれが新しい発想だ ! という意識で新しいカタチを提供しているのであって、あれがあのまんま町中を歩いていたら、いくらモデルさんでも変な人決定である。

富士山より高い4000メートルのビル(バカ)
   僕が設計を勉強しに夜間の専門学校で貧乏よろしくやっていた頃の事。どうも設計屋になりたい人間は変わり者が多いらしく、俺は1級建築士になって富士山より大きなビルを作りたい ! 的な人間がちらほらいた。そんなもん作ったら迷惑きわまりないし、実際稼働率は低いだろうと思うんだが、彼らは本気だった。不思議な事に実業界でもそんな人はいるらしく、バブルの時代に実際にそんな計画もあったそうだ。僕から見れば実に迷惑な建物である。よく富士山が見えるとアパートを購入したのに、隣にアパートが出来て見えないじゃないかと裁判になったりする。なのに、富士山の隣に富士山よりも高いビルができれば言わずもがなな気がするんだが。。
   また他にも大阪城の隣にあるあのガラス張りのビルに憧れる人間もいた。僕には全く理解できないのだが、あのビルに囲まれた大阪城が、十勇士に囲まれた真田幸村のようでかっこいいんだそうだ。。まったくわからない。よく景観問題で話題になるあの大阪城。周りのビルの多くはとある特殊ガラスで被われている。あれは実は設計屋は設計屋なりに景観に配慮しているつもりなんだそうだ。特殊ガラスに空がガラスに反射して、そこにビルがないように見せているといった仕組みだ。はっきり言っていい訳だと思う。僕からみれば、じゃあビルがない方がいいんじゃねぇ。。と思ったりする。どう考えたって始めから設計屋なら景観問題になるのは分っているはずだ。始めから大阪城を起点の高さに設定して、高さを決めとくべきだと気づかせてくれた分にはありがたいのだが。。

景観への配慮らしい
   しかし、そんなちんちくりんな彼らは設計屋は辞めて建設現場監督として活躍している。未だにそんなビルを作りたがっているのかは知らないが、建築家には不向きなタイプだったのかも知れない。。建築の世界は周りと議論するという場所が少ない気がする。常にデザイナーは一人親方で、他人の意見を聞くゆとりもなければ、聞いたらデザイナーとして成り立たないのだろうか。。しかし、聞くことによって町を形成する何かを得ることだってある気がするんだが。。

   設計屋のデザインとはとても説明しがたい。SANAAの設計は好きだ。透明感あふれているし、それにちゃんとデザインをやっている。景観に与える影響は他の建築家と比べて少ない気もするので僕は好きだ。難しいだろうが僕としては小さなプロジェクトをやって頂きたい。もちろん大きなプロジェクトをしなければ、社員を食べさるのは難しいと言うのは分っている。だが彼らの小さなプロジェクトに刺激を受けてみたいと思っている。

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