僕もまれに懇談会などに参加させて頂く事があるのだが、そのメンバーの中には大学などで都市計画を勉強して来た人間はまずいない。大抵は町役場の建築課の方が数人。そして建設や土木業の若社長に、嫌々参加した町の若者の会の代表さん。そしてなぜか元気がいっぱいのオバちゃん。。まあそんな顔ぶれである。まずは建築課の部長さんらしき人がご挨拶して、その後この町の魅力を言い合う。そしてその魅力を高めるにはどうするかを皆々で話し合う。大体がこんな流れである。
僕がまだ20代のぺ~ぺ~の設計屋であった頃に参加させて頂いた、というか眺めていたとある町の景観街づくりでは、その町のとある通りの景観について話し合いがされていた。いつものように町の建設課の部長さんのお話が終わると、建設会社の専務さんが現在ある仕様制限を緩和してくれと言い出した。その町は城下町であるので、ある程度のデザインの制限や高さ制限あるのだが、その場所に今住んでいる方が家を作る際の足かせとなるという事であるらしい。つまり景観条例をのっけから否定するため来られたようだ。まあその方が僕らの業界は儲かるのは事実である。土地を小割りしたり、高いビルを作れるからだ。周りのおばちゃんや若者の代表者さんはぽか~んとされていた。そりゃそうだろう。都市計画の事を専門用語でまくし立てられたら素人さんには無理な話である。だが何となくであろうか、 『そりゃそうよね~』 というおばちゃんの声に始まり、初めからとりあえず参加している若者の代表者さんは周りの意見にとりあえず頷き、結局は規制緩和という方向で決まってしまった。何のための景観街づくりかわからない。。
その後、グループに分かれてお話をする。僕の参加したグループでは、おばちゃんが、 『この通りの一角にケーキ屋が欲しい』 と言い出した。おいおいケーキ屋と景観がどのような関係があるんだと思うのだが、周りはいいですね~と言っている。。 『クリスマスにはみんなでイルミネーションして観光客を集めましょうよ』 とおばちゃんらが言いだし、とりあえずみんなで盛り上がる。だが黙っていた若者の会の代表者さんが反対した。ボランティアをさせられるのが目に見えているかららしい。。景観とイルミネーションはどういう関連性があるのかは僕には理解できないが、やりたければやればいいじゃんと思った。。
その後、グループで話し合った内容を皆で討論。。ではなく大きな紙に書いて見せびらかす。そして結局は僕からみれば景観という程のものはなった。。だが何かは決めた事にせなイカンらしく、最終的には 『花いっぱい運動』 というという事で落ち着いた。要はパンジーなどの安い花をみんなで植えましょうね ♡ という運動だ。これで町が美しくなるという事らしい。とりあえずまとまったので役所の方も満足。という事で皆さんで夜の町へ飲みに行った。
現在その町のその通りは、パンジーなどの花などは咲いていない。既にそんな計画があったという記憶さえ消し去られている。町は閑散として、きっとその計画で使われたであろう、元は白かったであろう花用のプラチックのポットがぶらりぶらりと軒下にぶら下がっている。その通りを通る度にあの会は何だったんだと嘆きたくなる。実に無責任な会である。。
最近、僕が住む宮崎の市町村では景観街づくりが盛んだ。だがそのまとまった景観の条例などを見ると、どうもプロの臭いがせず、とりあえず 『花いっぱい』 的なものになりやすい。僕は思うのだが、都市空間の専門家を少なくとも会の半分は入れた方が良い気がする。日本人はプロを大事にしない。これは間違えていると思う。宮崎県では景観アドバイザーという景観の専門家を派遣する制度がある。これを積極的に利用するべきだ。
ちなみに景観について高い意識を持つ欧米などでは、市町村が指名する建築家の方々 (設計士やデザイナー) と首長さんらが相談して町の景観を決めている。欧米では建築家と呼ばれる人々は町のカタチを市民から一任されているからである。僕はその方が町のために健全であるとは思っている。多くの日本人が海外旅行で欧米に出かけて町並みが美しいと思うのは、そんな努力をしているからだ。少なくとも 『花いっぱい運動』 は欧米なみの美しい町並みを作る事は難しいのでは無いかと思っている。
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