2013年5月1日水曜日

リフォームする前には耐震診断をした方がいい

   僕はひい爺さんが建てた昭和の部屋で寝泊まりをしている。1階はコンクリートブロックでその上部に木造の僕の部屋があり、そこに寝泊まりをしている。もちろんサッシなどは木製でガラスなどは昭和の空気がプンプンしている。施工された年は昭和5年と記載されていたとても古いお家だ。以前僕の家を改装した時に大工さんが僕の部屋をみてくれた。大工さんが言うには、このコンクリートブロックには鉄筋が入っているから地震が来ても大丈夫だよと言っていた。僕は 『あ~、そうですか~』 と応えてはみたが、心の中では 『こいつ何にも知らんのう~』 と嘆いてしまった。鉄筋が入っているかどうかなどは機械で調査しなければわからない。勘で応えたようだが、昭和5年の建物に、東京などならいざしらず、宮崎などのど田舎の建物には入っていない可能性の方が高いと思う。一般の人々は大工さんの勘は優れているというステレオタイプがあるだろうが、僕は大工さんの勘だけで家を建てる時代ではないと思う。

   僕は耐震診断もする。耐震診断は主に昭和56年の6月以前に着工した建物を対象として調べることが多い。というのも補助金がでるからだ。昭和56年6月以降の建物には補助金がでないため、自己負担となる。宮崎県の場合は一律6万円で調べるように決まっている。そのうち補助金が5万2千円なので自己負担は8000円だ。そう決まっているのでそうしているが、実際に耐震診断をする方から言えば、それでは割には合わないお仕事だ。僕らが診断する際は、実際に調査対象の建物の床下や小屋裏などに入って調べる。その調査を元にパソコンを使い、耐震診断を計算し提出するのだが、大抵の古い家は倒壊の危険性が高いと出てしまう。これはその当時の建築基準で建てられているからだ。現在の耐震診断の基準は阪神淡路大震災の揺れを基準として出している。なのでそれ以前である昭和56年の6月以前の建物などは、危険性が高いと出る可能性が高いわけだ。実際にこの基準で合わなかった建物は、神戸などでは大きな損害が起きている。

   昔のお家は大工さんの勘に頼るところが多かった。いまでは壁量計算といって、これくらいの長さの建物にはこれくらいの壁と筋交いが必要だという計算式がある。また偏心率という剛心と重心から割り出す値の計算方法もある。これらが昭和56年6月以前の建物には計算する義務がなかった。よって大工さんらの経験と勘が全てだったわけだ。当時の建物には筋交いだって入っていないところや金物を使っていない建物の方が多い。当時から入れた方が良いとは知っていたとは思う。だがそれが一般的だった。だが実際にはそんなお家は阪神淡路では壊れた。。

   工務店などに勤めていると、リフォームの依頼がくる。 『この壁を撤去して 1 つの空間にしたいんです』 とよく相談される。ほとんどの工務店の場合、 『大きな空間ができていいですね~』 などといってそのまま進めてしまう。もちろん地震などが起きたら、その壁が減る分だけ倒壊の危険性が高まる事となるが、そこは言及しないところが多い。もちろん危ないのは知っているだろうが、言ってしまったら仕事が来なくなると思っているようだ。本当は壁を壊したら、どこかに補強を入れた方が良いのだが。。

   勘に頼る時代ではない。しっかりと研究された計算式で家を建てる時代だと思う。少なくともリフォームする場合は、診断をしてから間取りを考えた方が良いと僕は思っている。

   8千円高くなるぐらいだし。。ほんのちょっと工事金額もあがるけどね。。

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4 件のコメント:

  1. 日本の文化の延長線上に立ち、かつ現代の技術も生かした住居とはどのような形であるべきだと思われますか。

    瓦やカヤ葺の屋根、土壁や漆喰の壁、職人による見事な木組み、欄間や襖の装飾etc... これらを残しつつ、住みよい現代住宅を建てていくことは可能だと思われますか。

    是非ご意見を賜りたく思います。

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  2. 匿名さん、コメントありがとうございます。

    国語力のないこのブログ書いてるのに、このようなしっかりとした文章を書く方から質問頂いて、とても恐縮です。できればペンネームとか入れて下さいね。後で分らなくなってしまうんで。。

    日本文化の延長線上に立った建物を作ることはもちろん可能だと思います。実際に建てている家はあちらこちらに見ることが出来ます。ただし作る際は、コストの面で難しいと思います。日本文化の延長線上に作られた家は大抵は古い家を改修したものが多い気がします。

    現代の技術をどういったものを言われているのかは分りませんが、断熱材などは最低限入れるべきだと思います。またエアコンなどの換気扇などは意匠で隠す配慮は必要だと思います。

    下段の質問瓦や。。についてですが、もちろんそれは十分可能だと思います。ですがどうしても本物(現代のが偽物とは思いませんが)の日本的技術をふんだんに使ったらコストがどうしてもかかります。やはり手間がかかりますので、コスト高になるのはしょうがありません。カヤ葺きなども可能ですが、職人が激減しているのが現状です。実際に作るとなるとまず職人さんを探す必要があります。また木組みが美しい建物とかはやはり構造計算などの必要があると思います。

    また土壁や漆喰壁は十分現代でも快適に暮らせると思います。もちろんどこにそれらの壁を配置するかにもよりますし、その敷地にもよるので一概には言えないと思いますが。。可能だと僕は思ってます。

    和の建物の中に現代の技術を取り入れるかが重要なんだと僕は思ってます。現代の技術を改良して和風にもっていった家よりも、その方が美しいと思います。実際に京都市の町家などには、現代の技術を取り入れた改修をされた家などが結構あります。また僕の田舎にある喫茶店などは十分に和の建物です。

    答えになっていないかもしれませんが、僕はそう思います。

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  3. お返事ありがとうございます。景観について憂いている現場の方のBlogというものは新鮮で、思わずコメントしてしまいました。

    私の実家は田舎にありますが、祖父の知り合いに宮大工の方がおられたのもあり、大変立派な家を建ててもらい、これぞ日本の家!とでも言うようなものです(自分の家のことを褒めるのもなんですが)。近所の家も昔は立派な作りの家ばかりで、景観も大層よかったのです。 しかし時代が進むにつれ家を維持できない人が多くなり、無機質でのっぺりとした家が増えてしまいました。 昔日の栄光を知っているだけに、虚しさが一層募るのです。 このような状況は私の田舎だけの話ではなく、日本全国で起こっている現象でしょう。車や新幹線で日本を巡れば一目瞭然です。

    私は日本の景観を何とかしたいが、何をすればいいのか分からず日々悶々としています。一国民にしかすぎない浅学菲才な私ですが、どうしても外に出る度に景観の事を考え、悲しくなってしまうのです。

    ですがこのBlogに出会い、景観の事を真剣に考えておられる方が私以外にもいると知ることができたので、幾分救われた気持ちです。

    興奮のあまり、推敲もせず書きなぐったような文章ですがお許しください。

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  4. kenさんコメントありがとうございます。

     僕は何度かこのブログでも書いたのですが、設計屋になったのは建築設計が好きだからではなく、日本の景観を何とかしたいという思いからこの世界に飛び込みました。しかし建築の世界にいて、景観への配慮がないと毎日のように感じています。工務店、設計事務所、行政、そして施主さんも景観という言葉が頭の片隅にもないのが現状だと思います。

     僕は全ての建物が古典的な日本建築で無ければいけないという風には考えていません。もちろんその方が美しいと思うので僕的には好みなのですが、実際問題としてコスト面から難しいと知っているからです。しかし、景観というものにはある一定の超えてはいけないラインのようなものがあると思い、絶対景観ブログという名前にしました。自分が設計する場合、そのラインを超えないようにしようという戒めでもあります。

     kenさんのように、景観を真剣に考える人々が少しでも増えていけば嬉しく思います。この絶対景観ブログという、半分はふざけているブログを通して、多くの方々が景観に目覚めて頂けたら、書き手としては光栄です。

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