僕がまだ京都の小さなアトリエ系の設計事務所にいた駆け出しの頃。まだ今ほど煙草代が高くなかったせいか従業員一同煙草をプカプカさせながらお仕事をしていた。そんなある日、僕は担当した淡路島のとある住宅を設計していた。何日もかかって出来上がったラフな手書きプランを先輩に見せた。だが先輩は僕に手直しを要求したきた。『君はデザインとデコレーションをはき違えている』と先輩は言われた。たまたま僕の机にはZIPPOがあった。それは僕が高校の修学旅行で、なぜか高校生なのに購入したZIPPOである。理由はあえて書かない。そのライターを片手にくわえ煙草の先輩はお教えしてくださった。
先輩が言うには、ZIPPOのカタチ自体がデザインであり、そのZIPPOに書かれたり貼り付けてあるものはデコレーションであるという事だ。例えば四角いZIPPOの角は丸く加工されている。これは手に馴染み易いための配慮である。またZIPPOはオイルライターだ。これはマッチなどと違い風が吹いても火が消えないため。また内部と外部の2層構造となっているのは外部のフタを閉じることにより火を消すためである。それに重さが素晴らしい。持ったことがある人だけに分る、手に馴染む重さである。またその長辺と短辺の比率は黄金比で出来ている。黄金比とは人間が一番美しいと思う比率であり、煙草の箱もそうだし、言われるまで気づかなかったが、フジテレビの本社もそうやって築かれている。片手で付けれるし、それに妙に可愛く感じるのはそのデコレーションもあるであろうが、やはり黄金比からでもある。これが大きかったらこれほど定番にならなかったであろう。
たしかに言われてみればそう思う。煙草を吸った経験のある人は分ると思うが、ZIPPOはとても手に馴染む。コレでないといけないといった感じのデザインで出来ている。その上、表面のデコレーションが美しい。多くのアーティストが自分の絵柄でZIPPOを華やかにせいている。僕が持っているのはバーガガールと言われるデザインのものである。実にエエ女なのである。ただ現在の彼女は首がもげている。。
最近ちんちくりんなライターを発見した。コンビニで煙草を買ったら着いてきたのである。名前はペンギンライター。以前からよく見るカタチではあるが、最初はどうしてこのカタチにしたのか僕には分らなかった。このカタチは、ZIPPOのように親指で火を付けるにはバランスが悪すぎる。下手すりゃ落としかねない。う~んと迷いながら、まあ付録のようなもんだからと思いながら使っていた。だがある時、これは実はよく考えられているのではないかと思うようになった。
あくまで僕の勝手な思い込みであるが、まず持ち方は、人差し指の第二関節と小指の第二関節で挟むようにして持つ。そして親指で着火する。すると自然と手は丸くる。このライターはオイルライターもあるようだが、僕のはガスライターなのでもちろん風が強ければ消えてしまう。なので自然ともう一つの片手は風から火を守るようにして添えるカタチをとる。あえて描写するとすれば、その両手が蓮の花のようなカタチになりとても美しい。ZIPPOに難癖を付けるとすれば人に煙草の火をあげる時にちょっとだけ緊張する事である。そしてその仕草は決して日本的ではなく『オラよっ!』ってな感じのなげやりなカタチになる。だがこのペンギンライターは両手を添えて実に仕草が美しい。クリステル的な『オ・モ・テ・ナ・シ』感さえある。ただ煙草の付録であるので僕が持っているのはもちろん軽いし、ちゃっち感が否めない。もちろんデコレーションなどはなく、その煙草の名前がプリントしてあるだけである。6000円ぐらい出せばエエ感じの本物が手に入るとは思うが。。宮崎にあるのかどうかは知らん。。
現在、大阪の建て売り住宅のプランを練りはじめている。机の引き出しの奧から出てきたZIPPOを見つめながら、デザインとデコレーションを綺麗にまとめたいと思ったりしている。
じゃないと建て売りだ。売れなかったら申し訳ねぇ~
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