2013年9月14日土曜日

『むくり屋根』は公家の香り

むくんでます
   僕は設計がお仕事なのだが、最近は『古民家風の新築』を求められる事が多くなってきた。街の景観を大事にしたい僕としては嬉しい事である。古民家風の新築と言われた場合、どの程度に古民家なのか施主さんとじっくり相談する必要に迫られる。僕は設計が本職なワケであり、施主さんはもちろん一般のお方。僕が考える古民家と施主さんの考える古民家には隔たりがあるからだ。人によっては内装を木材で整えたい程度の場合もあるし、外部もトータルで古民家風のを望まれている場合もある。以前僕が担当した家主さんはどうも最近ののっぺりした家が嫌いらしく古民家風の設計をと頼まれた。打ち合わせ段階でお話を聞いていると、どうやら古民家と言うより、数寄屋建築的な建物を望まれているようであった。詰めて話を聞いていると、どうやら内装は普通で外観が数寄屋風という事であった。『ああ、そうですか』と数寄屋っぽい普通の家の設計をはじめた。数寄屋なので『むくり屋根』を提案しようかと思い、担当する工務店さんと相談したら、『ややこしい事はい言わんでくれ。。』とクレームが入った。


   屋根には『反り』と『むくり』と言う手法がある。『反り屋根』はお寺やお城などに使われている下方に反った屋根をいい、『むくり屋根』は公家屋敷や数寄屋建築でよく使われる上方に反った屋根をいう。国の文化財として残っていたりするお城やお寺が反り屋根が多いので、何となく日本は反り屋根が多かったと思われる人が多いとは思うが、実は違う。本当は日本にはむくり屋根の方が多かった。確かに武家屋敷やお城は反り屋根や直線の屋根が多い。それはやはり胸をはっているようで堂々としているからだ。だが武家ではなく庶民の家は直線もあったがむくり屋根が圧倒的に多いといえる。

京都迎賓館
   よくある昔からの町家を見ると分るのだが、むくり屋根で整えてある所が多い。京都の商家などをじっくり見るとよく分るが、どこかゆったりお辞儀をしているようだ。やはりそれは反っていれば威張っているようで商いに影響したのが理由かもしれない。また『反り』よりも『むくり』の方が優雅に見えるのも確かである。

   また農家などは圧倒的にカヤ葺きが多かった。僕が幼い頃までは僕が住む宮崎の片田舎の山間などは、かやぶき屋根が結構残っていたものである。かやぶき屋根はもちろん草で出来ているので、いつかは腐る。その腐るのを出来るだけ長くするためには、反りのある屋根にはまずしない。軒先で雨水が溜ると耐久年数が減るからである。また、もちろん植物であるのでいつかはヘタる。最初は職人さんらができるだけ直線的な屋根を作っていても、そのうち勝手に丸くなる。軒先は特に丸くなるようで、気が付けば自然と『むくり屋根』になっていたようである。

   京都の町並みをじっくり見てみると、むくり屋根の家が結構残っている。それはやはりこの町が武張った街ではなかった証拠だと思う。また京都には公家さんらがいた。公家の文化はもちろん武家とは違う美意識を持っていたようで、京都にある公家の家々はやはりむくんでいて、とてもカワイイ。また京都には日本建築の最高峰と言われる桂離宮がある。また偉くなった人だけが入れる京都迎賓館もある(実は忍び込もうとした事がある。。いつか書きます。。)そしてこれらはしっかりとむくんでいる。

   僕の勝手な解釈かも知れないが、『むくみ屋根』は日本独自の屋根である。もちろんイギリスのカヤ葺きの家のように勝手にむくんだ家はあるにはある。だがそれをわざわざカヤ葺き以外で作り上げたのは日本人だけのような気がする。理由は海外の屋根を見てもむくんでないからだ。。それにはそれなりの理由もある。

   気が付けばもの凄く長~くなるので、今日はここまでにしておきます。

   明日も『むくみ』ます。

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むくみ屋根作りて~

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