2013年2月9日土曜日

古民家風の新築

   知り合いの60代の女性がお家を作りたいと言う。と言ってもまだ先のお話なのだが、現在ある自宅兼店舗の2階を取り壊し、1階に古民家風の住宅を建てたいとの事だ。その女性には姪っ子らが大阪の超高級高層マンションに住んでるんだが、姪っ子らが帰って来た時のために、田舎の古民家風の家にしたいとの事だ。場所は僕の町の超一等地。隣には役所があり、もちろんその駐車場は必然的に彼女のお店の駐車場となっている。また宮崎にしては元気な我が町の商店街のほぼ中央にその店はある。彼女曰く、現在は雑貨屋をやっているのだが、年取ったので2階に住むのは厳しいし、それにその家の寿命もそろそろなのでスケルトンリフォームをしたいのだと言う。彼女の知り合いの不動産屋さんが、新築の家を作るよりも現在ある家の上部を取り払って新しく家を作る方が、税金が安いのだと言っていたそうだ。僕はこの分野は詳しくはないので、本当かどうかはよく分らない。だが、僕は反対した。いくら自分の土地であろうとも町の超一当地にあるお店を潰してまで自宅を作るのは、町の発展から考えると残念だ。小さい建物でも作り直して若い奴らに店をかまえさせた方が老後の経済的にも恵まれるし、スケルトンリフォームは結構お金がかかる。なので今彼女と建物について色々お話をしている最中だ。知り合いといえども、銭くれんと作ってはあげないが。。

   最近つとに聞かれるのが、古民家風の家を作ってくれないか?という事だ。古民家風?ぼんやりしていて分るようでよく分らない。もちろんお客さんは一般の方なので、ぼんやりとした感覚で言ってらっしゃるし、設計する僕もぼんやりしながら聞いている。大工さんに言わせれば、梁を直接リビングなどから見せて、その梁に塗装を施して古く見せれば良いんじゃない?との事だ。また薪ストーブを入れればそれっぽくなると言われていた。間違いではないが正解でもない気がする。設計屋の自分から見ると、それだけではない生きた古民家にはならない気がしてやまない。もちろん、ぼんやりとだが。

   僕が考える古民家とは、新築の時にしっかりと作った建物がその住む人の手によって品良く劣化した建物だ。重要なのはしっかりと人の手が入っていること。昔の良い家に住む人々は毎朝雑巾がけなどをしていたので、美しい家となり、美しい古民家と呼ばれるようになったわけだ。つまりメンテナンスが重要だという事だ。そんな良い建物は多くの雑誌などで取り上げていたりして、設計屋の僕も見ていてうっとりする。仮に大工さんがおっしゃっていたようなペンキで塗っただけの建物では経年劣化のため剥げてしまうし、薪ストーブを作っても薪を自分で手に入れる方なら良いが、年取ったらそれなりに大変な労働となる。なので普通にエアコンを上部の壁にドンと後付けしてしまいがちとなり、気が付けば古民家が普通の家へと劣化してしまう。

   ではどうすれば、メンテナンスをきちっとやれるようにするのか。もちろん定期的に大工さんや僕らみたいなホームインスペクションを入れるのは一つの手だ。色々アドバイスしてくれて、尚且つ、かかりつけの医者のようにその家を診断しそして直してくれる。もちろんお金もかかるだろうが、それは一つの方法だ。もし自分でやるとすれば、やはり最初からメンテナンスしたくなる家を設計屋に頼むことだろう。設計屋はいかに楽しく施主が暮らせる家を作るのかがお仕事なので、そんな家造りの勉強ばかりしている。なので、間取りも色も、そして住む人の生活スタイルや年齢も考えて建物を作る。単に古く見せるのではなく、古くなっても素敵な家を目指して作れば、それなりに素敵な古民家へと家は変わって行くものだ。

   今年の初めに我が家でその女性も招いてパーティーをやったのだが、知り合いの大工さんも来ていた。そしてお家のお話になったのだが、 『今なら古民家風に見えるサイディングもあるよね~』 と僕に振ってきた。

   いやいや大工さん。デザインとはそんな程度のもんではないんだよ。。

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