2013年2月7日木曜日

森の中の都市

   景観法が制定されて以降、多くの市町村での景観行政は活発化している。例えば、僕の住む宮崎では景観賞を設けるなどして、景観を大事にする事を奨励していたりする。だが、一般市民の景観への意識はヨーロッパなどの先進国と比べれば、まだまだ低いと言えるだろう。町の景観を考えたり決めたりする上で市民へのアンケートは一つの有効な手段だと僕は考えている。アンケート結果を精査する事により、市民の意識を抽出し、その町の景観の優先順位を付ける事が可能になるからだ。以前、平成18年ぐらいだったか。。北九州市が景観に関する市民アンケートを実施しているのだが、行政がいわゆる景観問題と考えている看板・電線・建物の色やデザイン・歴史的建築物への関心は、30%ととても低い事が分ったそうだ。だが、多くの方々が景観問題を、空き地や空き屋などの問題、耕作放棄地問題としてとらえている事が分ったそうだ。また広島の呉市が同様の市民アンケートを実施したらやはり同様の答えが多かったそうだ。

   今日の朝方のNHKで放送されていたのだが、北九州市の全家屋に対する空きや率は10%を越えているそうだ。空き家があると治安が悪化しやすいし、その土地の価値を押し下げる要因となるので、好ましくはない。なので行政としても持ち主と連絡を取っているようだが、持ち主の高齢化のため撤去費用がない、現在遠くに住んでいるので、簡単に動けない理由で問題が先送りになっているのが現状との事だ。この種の景観問題は、表層的な景観対策を念頭においた景観法の範疇の外にある。なので法令上なかなか動けはしないのだが、多くの方々が景観を著しく損ねると回答しているように、日本人の目には空き屋などは汚いと映るようだ。これには神道の影響もちょっとだけあると僕は思ったりするが、今回は伏せておく。

   そもそも空き地や空き屋が景観問題として指摘されている場所は、住宅地としての条件が悪いために人口減少に伴って空き地や空き屋となっているものと思われる。また中には、バブルの時代に人口減少を考慮せず開発された場所も目立つ。これらのほとんどの土地は、都市計画上、 『市街化区域』 と呼ばれている地域が多い。『市街化区域』 とは、都市計画法第7条の2項によると、 『既に市街地を形成している地域、及び概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域』 であるとされている。この『市街化区域』 は都市人口の増加や集中に対処することを使命にしている。人口が増え、人口が集中する時代はうまく機能していたのかも知れないが、今はそのような時代ではなくなったので空き屋などの増加という事だろう。

   少なくとも都市のハード整備が一段落した今、その市街化区域を見直す時期に来ている気がする。僕は思うんだが、『逆市街化区域』 を作り出すのも一つの方法だと思う。自然を壊してまで都市化して来たのを辞めて、空き地や空き屋などを自然に戻すという考えだ。もちろん町の中央にある逆市街化区域は、手を加えた自然とするべきだ。ヤブでは意味がないからだ。そうすれば近隣の都市計画区域内の建物の価値も上がるだろうし、いつまでたっても迷惑を近隣にかける空き屋をなんとか出来るかもしれない。行政が強制的な働きかけをできる仕組みを今から考えとくべきなのかもしれない。

   我が国の人口の9割以上が、国土の約1/4を占める都市計画区域に住んでいる現実がある。少子高齢化が進む日本では今からそんな空き屋問題は増えるのは間違いない。現在の都市計画は町の中に自然があるのを目指している。これに格段ケチを付けるつもりはないのだが、森の中に町があるのも悪くはない気がする。

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