昼すぎに仕事をしていると、近所の親父が遊びに来た。近々ゴルフのコンペがあるので、僕の家のゴルフの打ちっ放し用ネットで練習させてくれとのことだ。『ああ、別にかまわんよ~』と僕は仕事に戻った。親父は30分ぐらいパカッ!というゴルフ球を打ち鳴らし練習していたが、速攻ヤキが回ったらしく、『アカン疲れた。。』と僕の事務所の横にへたれ込んだ。『そんなに疲れるならゴルフは無理だろオッチャン!』と優しい僕はお茶を出してあげた。その後、何となく建物の話になる。実はこの親父、僕のご近所に住みながら某有名ハウスメーカーで今年の正月に家を建てやがった。『どうよ、〇〇(某有名ハウスメーカー)』はと親父に聞いたら『開かずの間が多い』と言っていた。まあしょうがない。ハウスメーカーの設計は、専門のCADで作る。聞くところによると、間口は〇間で南向き、30~35坪などとドロップボックスで選択し、それを家主さんに渡し選んでもらう方式なんだそうだ。一応、プランは無限大という建前にはなっているようだが、まあそれはあり得ない。結局は設計士が設計をするというよりは、営業さんに背中を押されながら家主が決めていく。まあそんな流れだろう。
『ハウスメーカーで作るからじゃが』と親父さんに言ったら、『だって展示会場に行ったらやっぱり良いんだよ~』と言う。僕ら設計する人間は良い物を多くみているので違う意見を持っていたりするのだが、結局はそのお金を出す人が気に入ればそれで良いと僕は思うので、そこは『まあね』と答えた。だが『でも坪80万もしたんよ~』と親父がぼそりと言った。え!?見た目坪40万じゃん。。設計事務所ががっつり入ったとしてもそれ程お金はかからない。そんな話をしたら親父が言った。『設計屋って、線引いて工事金額の1割持っていくって営業さんが言っていたよ。うちは設計料金タダだったけど』んっ!?チョ~間違えているし、騙されている!!
世間の設計屋に対する見方として典型的なイメージとして『線を書いているだけで』というものがある。だが僕の経験から言えば、線を実際にCADで書くのは僕らの仕事(監理を除く)の2割程度だ。実際はその他にも色々な事をしなくては良い家はできない。僕の場合は大体だが、監理を除いた純粋な設計業務の内訳としては、プランを考えるのが4割、お客さんはもちろん、業者さんや建材屋さんとの打ち合わせが2割、そして調べ方が2割で線を引くのが2割程度だろうと思う。
設計の仕事をは大きく分けると、設計と監理に別れる。監理は別の機会に書くとして、設計の中には基本設計(大体の間取りや大体の仕様を決める図面。お客さん用)と詳細設計(仕様書や詳細図など現場で使用する図面。実地設計とも言う)に別れる。多くの設計事務所の場合、基本設計が4%で詳細設計が3%ぐらいだ。また別に、時間から算出する方法もある。工務店仕様(簡単な間取り程度の図面)の設計だと100㎡(30.3坪)で270時間で計算する。この数字に日当をかけて出したのが大体の設計金額となる。これは国土交通省が出している計算方法(国土交通省告示台十五号)による。もちろん、工務店仕様の図面でなく、詳細図が必要な設計事務所が作るような家や、3階建て、構造計算が必要な図面によってその計算時間は変わってくる。これが線を書いているだけだと思うなら確かに高く感じてしまうだろうが。。
だが工務店やハウスメーカーが設計しても、実は同じ金額は請求されている。僕は仕事がらいろんな工務店やハウスメーカーの見積もりを見てきたのだが、その見積書の中には設計料という項目は一度も見た事がない。だがその見積もりなどを比べてみたら分るのだが、大抵は工事金額の4%前後の金額を、敷地の整備費用や諸経費、電気工事料金、または水道工事料金の中に入れている。これは工務店やハウスメーカーは坪単価を気にするからというのがその理由だと思う。
工務店やハウスメーカーは詳細設計はほぼしない。しても自動で出力されるCADを持っているだけの場合が多いと思う。特に標準仕様が決まっている工務店さんやハウスメーカーなどはまず詳細設計などは必要無い。なので大抵は基本設計だけで済ませる。よく『うちは設計料は無料です!』と謳う工務店さんがいるが、それは嘘だろう。まずはありえない。なぜなら基本設計だけでも打ち合わせなどをしていると、大抵は2ヶ月ほどはかかる。人間2ヶ月ほど働いて0円ってのはどんだけブラック企業なんだろうと思う。まあ図面はここから選んでねって所も多い。それでも少しずつ図面は変えていくわけで、やはり0円ってのはあり得ない。まあ工務店の場合、10~20%が、ハウスメーカーの場合30~50%が粗利(売り上げ-原価)なわけで、諸経費を除いても設けは百万以上は出る。そこから設計料金が出ているというのが自然だろう。別に騙しているワケではなく、それが当然だと思っているようである。
設計士の試験は製図があり、大抵30分ほどでプランを考えないとその試験には受かるものではない。つまり、戸建て住宅の場合は書こうと思えば30分ほどでプランは出来上がる。だがそんな家に一生住みたいだろうかと思ったりしてしまう。だが現実にはちゃちゃっと書いた設計の家が圧倒的に多いんだが。。
設計料金を隠さねばならないほど、設計業務は、はしたないもんなんだろうか。。
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それではまた来週!
2013年12月13日金曜日
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